2022.04.15

クラゲに優しく、人に優しく(全国大会2021・日本財団賞)

研究テーマ名:ムチンの増加・抽出の研究〜ミズクラゲからの贈り物〜
研究代表者:橋本 沙和(高校1年生)
研究代表者所属校:桐光学園中学校・高等学校
受賞:日本財団賞

 

クラゲのことが大好きな橋本沙和さんが注目したのは、クラゲが持つヌメヌメ成分であり、製薬業界で注目されている「クニウムチン」。ところが、これまでの採集手法はクラゲを破砕するという、あまりにもクラゲが不憫な方法しかありませんでした。大好きなクラゲを殺さずに効率的に採集する方法はないのか。クラゲにも、人にも優しい研究の幕が開けました。

 

クラゲに対する暴力反対!

 橋本さんは幼い頃からクラゲのことが大好きで、彼らに関する様々な資料を読み漁っていました。そんなとき、クラゲには抗菌作用や保湿効果、低アレルゲン物資としての特徴を持つ「クニウムチン」という物質を持っていることを知りました。しかし、さらに調査を進めてみると1個体から採集できる量は少なく、また、破砕しないと効率的に採集できない残酷的な事実を知ったのです。クラゲにも優しい方法で、沢山のクニウムチンを採集する方法を確立したい。そうすればクラゲにも迷惑をかけずに、恩恵を受けることができると考えたのです。

 

大切なのは彼等の気持ちになること

 この研究を進めるためには、水族館のような設備のない環境でもクラゲの安定的な飼育を実現することがとても重要でした。幸いなことに、クラゲは新江ノ島水族館の協力を得て入手できましたが、水槽の設計に関しては自分たちで進める必要がありました。クラゲは他の多くの水産生物と異なり、水槽内に流れを作ってあげないと底に沈んで酸欠になってしまい、水流が強すぎれば柔らかな半透明の体はバラバラになってしまいます。初めのうちは、何度かクラゲには申し訳ないことをしてしまいました。しかし、飼育を進めるにつれて、クラゲに対する理解が進み、どのような環境がクラゲにとって最適なのか分かるようになり、結果として研究手法にもその考えを応用することができました。

 

ミズクラゲからの贈り物が世界中に広がる未来に向けて

 現在は様々な刺激を与えることで、抽出できるムチン量の違い、その際にかかるクラゲへの負担の違い、採集したムチンの単離方法などについて研究を進めています。また、今後は抽出したクニウムチンを活用し、人の役に立つ研究開発まで幅を広げていきたいと考えています。まだまだ始まったばかりの研究ですが、いつの日か、海の生き物と人の相利共生を実現する一助となる研究として、ミズクラゲからの贈り物を世界に届ける日を橋本さんは夢見ています。

海と日本PROJECT
このイベントは、海と日本PROJECTの
一環で実施しています
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