2021.03.01

血液検査で魚の性転換の秘密がわかる?(浅野中学・高等学校)

研究テーマ名:魚類の性転換が引き起こす生体内外の変化と性識別への応用
研究代表者:皆川 優生
研究代表者所属校:浅野中学・高等学校

魚の中には、途中で性別が変わってしまう仲間がいるのを皆さんは知っていますか?例えば水族館でも人気なクマノミ。群れの中で一番大きな個体がメスになると言われています。この性転換、まだまだわからないことが多く、解剖しないとオスかメスかわからないものもいます。そんな性転換の秘密が血液検査だけで解るようになるかも知れません。

理科室で性転換の謎に挑む
海の中をスイスイと泳ぐ魚たち。その中にはオスとメスが入れ替わることがある魚がいます。浅野高校の皆川くんは沖縄旅行した際に、この性転換の話を聞き、興味を持ったといいます。性転換の研究について調べてみると、性ホルモンを投与してその後の変化を分析する方法などが用いられることがわかりました。けれど、高校生が学校で実験や研究を行うには難しそうです。生物の授業で男女で血球数の違いがあるという話を聞いた皆川くんは、「血球数を調べれば性転換の秘密を探れるのではないか?」と考え、今回の研究テーマをひらめきました。
「本当は実験対象としてクマノミを使いたかったんですが、値段が高かったため、東京湾で簡単に取れるキュウセンという魚を選びました」。ベラの仲間であるキュウセンは性転換の際に体表の色が変わるため、変化のタイミングを捉えやすく、初めて研究に挑戦する上でもとても良い生物でした。また、キュウセンの仲間は、体長が大きくなると性転換すると言われていますが、その要因は未だ明らかになっていませんでした。

初めての研究、試行錯誤の日々
いざ研究を始めてみると、毎年生物部で実際海に採りに行くことができたキュウセンも緊急事態宣言の影響により集まらないといったトラブルに見舞われました。魚から血液を抜いたことがなかったので、苦肉の策で金魚を使って練習しました。ベラの仲間は性転換するものが多く、研究も数多く行われているが、キュウセンの研究はあまり行われていなかった。皆川くんは、大学の先生や水族館にもヒアリングをかけて、情報を集めることにしました。
キュウセンは従来、群れの中で成長した個体からオス化するとも言われています。そこで、飼育する水槽の大きさを変化させて、飼育密度を変えて実験してみることにしました。その結果、大きい水槽では15-16cmの大きさになってから始まる性転換が、小さな水槽ではもっと小さな個体でも性転換が始まるといった新しい発見が得られました。現在は、その現象の解明に向けて、さらなる実験を進めています。

ホンベラから血液を採集する様子 採集した血液

新たなるチャレンジに向けて
マリンチャレンジプログラム2020関東大会の際には、審査員からホルモンの作用を調べるために、脳や精巣などホルモンを作る器官をすり潰して、投与したらどうかといったアドバイスをもらいました。また、定点カメラを使った行動解析など、まだまだ試せていないアイデアがたくさんあります。本来であれば、ホルモンなどを投与しなければわからない性転換の研究。血液検査の結果から、性転換と血球数の関係も見えてきました。まだ誰も知らないキュウセンの性転換の謎を明らかにしていくことに、皆川くんはワクワクしています。

海と日本PROJECT
このイベントは、海と日本PROJECTの
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