2021.03.04

イタセンパラが暮らす未来に向かって(愛知県立一宮高等学校)

研究テーマ名:タナゴ属の人工的産卵装置の開発 ~イタセンパラ保護のために~
研究代表者:安藤 匠
研究代表者所属校:愛知県立一宮高等学校

タナゴ類の仲間は水流が緩やかな場所を好んで生息する淡水魚です。その中でもイタセンパラは絶滅が危惧されており、その保全が急務となっています。安藤匠さんが率いる愛知県立一宮高等学校のチームは、イタセンパラの保全に役立つ人工繁殖方法の効率化を目指し、近縁なタナゴ類を用いて人工的に産卵を誘発する装置の開発に取り組んでいます。

イタセンパラに心奪われて
安藤さんが生物部に入部して興味を持ったのが、先輩たちが研究対象にしていた「イタセンパラ」です。繁殖期になるとオスの体色が色鮮やかな婚姻色へ変化します。「とにかく美しい!その美しさに目を奪われました」と語る安藤さん。さらに特徴的なのはその繁殖方法です。イタセンパラをはじめ、タナゴ類の仲間は淡水性二枚貝の入水管に卵管を挿し込み、その体内に産卵するのです。この独特な繁殖方法から、安藤さんは生物どうしの関係性や結びつきを強く実感し、さらに魅了されたといいます。そこで安藤さんは、先輩たちの研究を引き継ぎ、イタセンパラを効率的に産卵させる人工産卵装置の開発に挑戦することにしました。

始めてわかった実際の研究活動
現在は装置の開発に先立って、近縁種を用いて水槽内でのタナゴ類の繁殖条件を検証しています。水温や二枚貝の有無など、繁殖行動を誘発する条件を探索し、実際に水槽内で産卵行動を観察することで、装置の開発に役立たせたいと考えているのです。高校生になって初めて本格的な研究に取り組んだ安藤さん。これまであいまいだった研究活動のイメージは、実際に取り組んでみて大きく変わったといいます。「仮説を綿密に設定したり、実験の段取りを細かく組んだり、思っていた以上に厳密さを求められて悩むことも多いですが、それも含めて楽しいです」と研究者らしい表情を浮かべました。

イタセンパラが遊泳する水槽内の様子

共にゴールを目指す仲間を集める
安藤さんの研究の目的でもあるイタセンパラの保護には、賛同してくれる仲間や保全に必要な知見を蓄積する研究が欠かせません。そこで安藤さんは、積極的に声をかけて研究を引き継ぐ後輩たちを仲間にすることができました。すでに自分たちでテーマを立てて、後輩チームの研究もスタートしています。そして安藤さん自身は、将来は小学校の先生になり、これまでの研究経験を活かしてイタセンパラの保全に子どもたちと取り組みたいと語ってくれました。水槽での人工繁殖が容易になれば小学校でも子どもたちといっしょに稚魚の生産や飼育研究が可能になるかもしれません。現在の研究が自身と次世代をつなぐと信じ、今日も水槽の前で観察に励みます。安藤さんが築いていく、イタセンパラの絶滅を心配しなくても良い未来が待ち遠しく感じます。

海と日本PROJECT
このイベントは、海と日本PROJECTの
一環で実施しています
PAGE TOP