餌をあげようと水槽に手を伸ばすと、金魚たちはいつもいそいそと近寄ってきます。「魚にも学習能力はあるのかもしれない」みなさんも、こう感じたことがきっとあるはずです。熊本第二高校のチームは、この魚の学習能力の中でも、特に色を見分けることができる能力に着目し研究を始めました。
釣りがきっかけで研究がスタート
釣りが大好きな福岡くんたち。釣りのルアーが様々な形、色や模様があることに着想を得て、魚が色を識別できる能力を研究テーマにしようと考えました。2019年度の研究では、イチモンジタナゴが異なる2つの色を、学習のうえ識別できることがわかっています。魚がもつ色の識別能力を活用することで、魚の動きをコントロールできるかもしれない。それができれば、魚の養殖場で効率的に魚を回収することも不可能ではない。この発想から今年の研究がスタートしました。
自作の装置で試行錯誤
まず最初に、タナゴ以外の魚にも学習能力があるのかを調べました。2019年度の研究では、イチモンジタナゴの色の識別能力が明らかなになっています。そこで、他の魚種も同様の能力があるのかを調べるために、まずは同じ川魚のカワムツを用いて、1ヶ月間の学習に対して赤色光・青色光のどちらの学習効果が高いのかを調べました。実験装置をダンボールで自作し、光が混ざらないように工夫をこらしていました。研究を始めた当初は、光の色を変えることによって、魚の行動を操ることができると考えていましたが、なかなか仮説通りにいきません。しかし、「知りたい」という強い熱意を原動力に、試行錯誤を繰り返しことで研究を少しずつ発展させていきました。
イチモンジタナゴ・カワムツにおいて色の識別能力を確認している様子 |
目指すは効率の良い魚の回収装置開発
地方大会までには、魚種によって、認識しやすい色があることを確かめた福岡くんたち。今までは同じような環境に住むタナゴとカワムツの比較を行っていましたが、さらに研究を発展させるために新たな実験にも取り組んでいます。彼らは魚の体の色が繁殖期に変わる婚姻色の有無が、色の識別能力に影響しているのではないかという仮説の検証を行いました。多くの川魚は婚姻色が現れてしまい、実験に適さなかったのです。しかし、金魚が婚姻色を発現しないことに気づき、全国大会に向けて新たに実験をスタートさせることができました。この研究では、思うように魚の動きをコントロールすることで、効率的な魚の回収装置を作っていきたいと考えています。彼らの研究成果が、これからの養殖技術に新たな可能性を与えるかもしれません。