2021.03.04

未利用資源の活用を目指して干潟環境の変化を追う(岡山学芸館高等学校)

研究テーマ名:牡蠣殻を用いて干潟の生物多様性を回復する手法の確立に向けて
研究代表者:六車 心音
研究代表者所属校:岡山学芸館高等学校

人為的に撹乱された自然環境は、その後どのように変化していくのでしょうか?六車心音さんが率いる岡山学芸館高等学校の研究チームは、身近な干潟で起こった大きな変化を調査し、地元で大量に廃棄されている牡蠣殻を活用してその回復を手助けできないか、検証を進めています。

身近な自然で起きた大きな撹乱
六車さんたちの研究フィールドは、岡山県南東部にある鹿久居島北側に広がる米子湾の干潟です。近辺の海に広がるアマモ場は一時期壊滅状態にまで減少しましたが、地元漁師を筆頭に地域ぐるみで尽力し、現在はアマモ場の再生が進んでいます。六車さんの先輩たちは、2017年からこの干潟で底生生物の調査を行い、生物多様性の評価を行ってきました。ところが、2018年に行われた大規模な清掃工事で干潟にブルドーザーなどの重機が入り、砂礫で構成されていた底質が破壊され、細かい泥が堆積してしまいました。翌2019年に行われた調査では、これまで優占していたウミニナの個体数が大きく減少していることがわかり、人為的撹乱の影響が明らかになりました。

干潟環境の回復を目指して
先輩たちの研究発表を聞いた六車さんは干潟の生物多様性に興味を持ちました。「その干潟は小学校の頃から身近に感じていた場所です。干潟での大規模な工事の影響を知りたいと思いました」と語る六車さん。先輩たちの調査を引き継ぎ、友人らと共に干潟にコドラートを設置して、ウミニナの生息状況の変化を調査しました。また、地元で廃棄される牡蠣殻を設置することで、ウミニナの餌となる珪藻類が繁茂するのではないかと考え、生物多様性を回復させる手段としてその効果を検証することにしました。人間活動の影響が自然環境にどのような影響を与えるのか、撹乱や環境再生の両方向の影響を明らかにすることでそのバランスを取ろうという試みです。

コロラード内のウミニナを調査する様子と干潟の変化

地元の未利用資源の可能性を探る
2020年7月に六車さんらが調査した結果、なんと海側に近いコドラートでウミニナの個体数と優占率の大幅な増加がみられたのです。「予想以上の結果でした。周囲を底質が砂礫に戻っていたのでウミニナの生息に適した環境に戻ったのだと思います」と、干潟環境の回復傾向を示す結果に六車さんたちも驚きました。現在は牡蠣殻設置の効果を継続して検証しており、その結果を楽しみにしています。その他にも、六車さんのチームは牡蠣殻の活用に興味があるといいます。「本当にたくさんの牡蠣殻が廃棄されているので、環境改善以外にも活用方法を見つけたいです」と、今回の研究は地元の未利用資源の活用を考える機会にもなったようです。まずは自分たちの手で牡蠣殻活用の効果を明らかにし、地域資源の新たな価値の発掘を目指します。

海と日本PROJECT
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