皆さんは、ウニの卵割(受精卵の細胞分裂)を観察したことがありますか。時間と共に刻々と形を変化させるその姿はまさに、生命の神秘です。そんな生き物の発生に心を奪われたチームの活動を追いました。
生命の発生過程に魅せられて
ことの始まりは高校2年生の時。海洋生物の講義を受ける為に訪問した浅虫の研究所での経験でした。体験したのは、ウニの卵割観察。「時間と共にウニの卵が変態する姿に感動しました。この観察実験がどんな学校でも簡単に実施できるように、累代飼育方法(何世代にもわたって繁殖させ飼育すること)を確立したいと思ったんです」。と研究代表者の髙橋くんは話します。
研究活動が初めてだったということもあり何からすべきか分かっていなかったと言う高橋くん。中高生のための学会「サイエンスキャッスル2019 東北大会」の会場でマリンチャレンジプログラム2020の参加者を募集するブースを見つけた際に、気が付けば自分たちの思いを運営事務局員にぶつけていました。こうして髙橋くんたちの研究が始まったのです。
確かな実績は、丁寧な調査から
本命の研究対象であるハスノハカシパンを手掛ける前に、飼育経験のあったコシダカウニの累代飼育研究に着手しました。まず初めに、コシダカウニのプルテウス幼生を飼育する密度が正常発生率にどの様な影響を及ぼすのかを観察。研究を開始してみると、ある個体数密度から、正常発生率が指数関数的に下がる事が分かりました。また、別の実験では幼生を稚ウニへと変態誘起物質させる物質について調査し、先行研究で報告された物質では変態しない種もいる可能性を示唆させる研究成果を得ることができました。
「数百を超えるプルテウスの個体数確認を始め、日々の飼育活動や仮説の立説は大変でしたが、進捗があった時は本当に嬉しかったです。」とチームメンバーは研究プロセスを振り返ります。
左上、左下図:飼育している個体の状態を観察する様子 左下:観察したハスノハカシパンの4細胞期 右図:観察したハスノハカシパンの8腕プルテウス幼生の様子 |
マリンチャレンジから始まる次のチャレンジ
「今回の経験から農学系の道に進みたいと思いました。そしてもっと研究活動がしたいです」。「今回の研究活動を通じて、生物物理の道に進みたいと思いました」。「この1年間で培った研究をわかりやすく人に伝える方法を武器に、誰もが面白いと思える社会の授業ができる先生になりたいです」メンバーは口々に次の目標を話していました。決して平坦な道のりではなかったこの1年間の研究活動でしたが、その経験は彼らの次なるチャレンジの原動力となったようでした。