研究テーマ名:放射相称であるウニ類の体の方向性とその要因
研究代表者:満永 爽太
研究代表者所属校:熊本県立済々黌高等学校
受賞:最優秀賞
みなさん海に棲むウニをご存知でしょう。ウニの体は中心から放射状に棘や内蔵などの器官が配置されています。この「放射相称」と呼ばれる体の構造から、体に前後左右はないと言われています。そんな、研究者の中では常識と考えられていたことに疑問をもち、今回のマリンチャレンジプログラム全国大会で見事、最優秀賞を受賞したのが満永爽太さんです。
ウニ、決まった方向に動いてない?
「ウニの移動に方向性があるのではないか?」はじめに疑問に思ったのは、同じ生物部のメンバーでした。生物部で飼育しているムラサキウニのタイムラプス動画を観察していた時のことです。ムラサキウニは棘に長短があるため体の向きがわかりやすく、決まって棘が短い方向に動いているように感じたのです。見た目も丸く、放射相称の体をもつウニにも前後左右があるのではないか?観察から生まれた素朴な疑問から、まさに右も左もわからない、ウニの体の方向性の研究がスタートしました。
観察の末に見つけた「道しるべ」
研究でまず苦労したのは、ウニの体の方向をどう見分けるかです。棘にマニキュアを塗る、ビーズをつける、殻にネジを打ち込むなど、様々な方法を試しましたが、棘が取れたり、ウニが弱ったりとなかなかうまくいきませんでした。
そんな中で着目したのが「多孔板」と呼ばれる、ウニが海水を取り込むための器官です。多孔板は観察に慣れるとウニを傷つけることなくその位置を確認することができ、放射相称と言われるウニでも一方向にしかないため、ウニの体の方向を調べる手がかりになります。満永さんたちは、この多孔板の他、棘の長短などを元にウニの進行方向に決まりがないかを検証しました。
研究を通して深まるウニと研究への思い
研究を進めていくと、やはりムラサキウニは棘の短い方向に進むことがわかってきました。しかし、予想していた多孔板と移動方向の関係性は見出せずにいました。その状況を変えたのが、ウニは物に触れた方向を「接触記憶」として覚え、その方向に移動するという論文でした。この情報を元に、物に触れない時間を作りウニの接触記憶を消した状態で実験をすると、ウニは棘の長短や接触記憶によって移動方向が変わるものの、その移動方向のベースは多孔板の位置で決まっていることがわかりました。
はじめからウニや生物に興味があったわけではなく、生物部にはなんとなく入ったという満永さん。今後はウニだけでなく、ヒトデやウミユリなどの棘皮動物たちも研究したいそうです。海への興味の入り口は、日頃の観察の中で得られる小さな疑問から始まるのかもしれません。