2022.04.15

藻類色素を使って安全なクレヨンをつくりたい!(全国大会2021・JASTO賞)

研究テーマ名:藻類から作る安全なクレヨン
研究代表者:武藤 倫太朗
研究代表者所属校:東京学芸大学附属竹早中学校
受賞:JASTO賞

 

研究者から海や川の中に生息する小さな藻類に、さまざまな能力が秘められていることを教えてもらった武藤 倫太朗さん。そんなとき、アレルギーで困っている友達の話を聞きました。藻類の力を使って、なにか出来ることはないだろうか。武藤さんの挑戦がはじまります。

 

アレルギーの人でも安心して使えるクレヨンを

 友達の話をきっかけにアレルギーについて調べてみると、石油から作った化学物質にアレルギー反応を示す化学物質過敏症の人がいて、問題となっていることを知りました。最近ではアレルギー対策のため、植物からクレヨンを作る取り組みも進んでいるようです。そこで武藤さんは、様々な色素を合成し、油を溜め込む性質をもつ藻類を使えば、アレルギーの人でも安心して使えるクレヨンができるのではないかと考えて開発に取り組みました。

 一般的なクレヨンは色素、ロウ、脂肪酸からできています。クレヨン工場にヒアリングしたところ、高熱で30分以上色素とロウを混ぜ合わせる必要があるとのこと。そこで、武藤さんは家庭でも簡単にクレヨンを試作するための方法から考えることにしました。

 

アイデアをどんどん試して、前に進める

  最終的に採用したのは、お弁当に使うプラスチックカップと電子レンジを使う方法。このオリジナルのクレヨン作成法を用いて、まずは一番入手しやすい緑色の藻類「イカダモ」を用いた実験をスタートさせました。

 実際にクレヨン作りを始めてみると、混ぜるロウや脂肪酸の割合によってクレヨンの硬度、色の濃さ、密着性、滑らかさなどが大きく変わることがわかりました。そこで、クレヨンを構成するロウ、脂肪酸についてそれぞれ複数の候補物質を挙げ、組み合わせを変えながら最適な混合割合について詳しく検討しました。その結果、ワックスと脂肪酸は1:1の割合で混合するとよいことや、イボタ蝋やライスワックスなどの融点が70℃以上のワックスでクレヨンを作成すると、硬くなりすぎることなどがわかってきました。また、色の濃さや滑らかさの観点からは、ソイワックスとスクワランオイルの組み合わせが優れていました。

 

藻類由来、光るクレヨン誕生!

 検討した組み合わせや組成を参考に、緑色以外にもいろんな色のクレヨンを実際に作って性能を比較しました。ひじきを使った茶色クレヨンに、シダ植物の化石である石灰を使った灰色クレヨン。中でも藍藻がもつ青色色素フィコシアニンを使った青色クレヨンでは、色素を抽出する溶媒を変えることで、鮮やかな青緑から黄緑まで色味が変化することを発見しました。さらに、この青色クレヨンはブラックライトを当てると赤い蛍光を示すこともわかりました。藻類のもつ色素の特徴が作成したクレヨンにも引き継がれ、光るクレヨンができあがったのです。

 藻類はクロロフィルやカロテノイドなど、多様な光合成色素を持っているので、今後は赤色、黄色などもっとカラフルなクレヨンを作れる可能性があります。誰でも安心して使えるクレヨンの実現に向けて、挑戦は続きます。

海と日本PROJECT
このイベントは、海と日本PROJECTの
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