2021.02.28

海のチアリーダーが教えてくれる、生き物たちの繋がり(サレジオ学院高等学校)

研究テーマ名:キンチャクガニと保持されるイソギンチャクに関する研究
研究代表者:榊原 聖瑛
研究代表者所属校:サレジオ学院高等学校

数センチにも満たない小さなカニの魅力に取り憑かれて始まった研究活動。先行研究のないなか必死に研究を続けた結果、2019年のマリンチャレンジプログラム全国大会では見事JASTO賞を受賞しました。研究を開始してはや2年。カニとイソギンチャクの奇妙な関係性を解明する、彼らの姿を追いました。

派手な見た目に隠された大きな謎
「もともと研究がしたいと思っていたわけではないんです」研究代表者の榊原くんは話します。しかしそんな彼の心を大きく動かす、摩訶不思議な生物が海には生息していました。それがキンチャクガニです。
臆病な性格からは想像もつかないほど派手なしましま模様。左右のハサミで保持された小さなイソギンチャク。とある番組で知った、チアリーダーのような見た目をしたそのカニは、1cmほどの小さな体に、沢山の謎をぶら下げて榊原くんの前に現れました。「どうして大切なハサミで、常にイソギンチャクを持っている必要があるのか?」、「イソギンチャクとカニはどうして一緒に過ごしているのか?その関係性は?」興味を持って論文などを検索しても出てこない答え。そんなとき理科の先生から自由研究課題があることを伝えられ、2019年4月、謎の生物キンチャクガニの生態研究が、榊原くんの想いに賛同した仲間たちと共にスタートしました。

先行事例のない研究の難しさ
研究を開始し真っ先に困ったことは、キンチャクガニに関する情報の少なさでした。もともと観賞用として人気のあったキンチャクガニ。しかし研究対象とされることは少なく、これまでに文章として発表されていたのは、自然界での発見例が数件程度。鑑賞に伴い蓄積された基礎的な飼育方法を除き、ほぼ全てがブラックボックスでした。そこで榊原くんたちが最初に始めた研究は、仮説を作るために必要な、彼らの生態を知るための飼育研究でした。
「ネットを調べても本当に何も出てこないので、失敗覚悟でとりあえずやってみました。特に日々の飼育は本当に失敗の連続でした」と、メンバーの一人は懐かしそうにに話します。水槽の掃除や餌やりはもちろん、時折訪れるモーターの故障のメンテナンス、そして慣れない研究活動。とにかく大変な毎日でした。しかし日々の飼育研究はとても刺激的で、1年目にして、「キンチャクガニは特定のイソギンチャク以外のイソギンチャクも保持する」という、世界初の発見をすることができました。

細胞切片を光学顕微鏡で観察する様子 キンチャクガニの爪に挟まれたイソギンチャクの様子を細胞切片に加工し観察した様子

この面白さを1人でも多くの人に
「次の目標はこれまでの研究データを論文に落とし込み、学会で発表することです」メンバーは口を揃えて話します。またあるメンバーは、「こんなに不思議な生態をしているのに、研究されていないなんてありえない。キンチャクガニ学会を作り、この魅力を一人にでも多くに伝えたい」そんな壮大な夢を語るメンバーもいます。ふとしたきっかけから始まった研究活動。生き物たちが織りなす不思議な関係に惹かれ、榊原くんたちは今日も研究を続けます。

海と日本PROJECT
このイベントは、海と日本PROJECTの
一環で実施しています
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